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お見合いに履歴書を持ってきた男
ゼクシィ縁結びエージェントで起こる珍エピソードをフィクション物語でお送りします。
こんな事もあるよって言う体験談を元にした物語です。登場人物などは全てフィクションです。
序章:真面目だけが取り柄の男
佐久間慎一(さくま・しんいち)、37歳。
彼は都内のメーカーで働く真面目一徹なエンジニアだった。性格は誠実そのもので、学生時代から勉強一本。恋愛はというと、大学時代に片想いした女の子がいた程度で、35歳を超えるまでほとんど無縁だった。
彼が婚活を意識し始めたのは、同僚が立て続けに結婚した頃だった。
「そろそろ……オレも考えなきゃな」
婚活アプリは性格的に合わないし、街コンは騒がしくて苦手。そんな中、選んだのがゼクシィ縁結びエージェントのような対面式の婚活サービスだった。
「ここなら、同じように真面目な人がいるかもしれない」と、淡い期待を胸に入会したのだ。
第一章:アドバイザーとの初対面
婚活アドバイザーの女性、田村さんは明るくて優しい人だった。初回のカウンセリングでは、慎一がいかに真面目で誠実な人間かをじっくり聞いてくれた。
「佐久間さんは、本当に丁寧な方ですね。そういう誠実さを求めている女性は多いですよ」
その言葉に、慎一は少し自信を持てた。
そして田村さんは続けてこうアドバイスする。
「プロフィールの自己紹介文には、ちゃんと“人柄”が伝わるエピソードを入れてくださいね。あと、女性に“安心してもらえる材料”があれば、積極的にアピールして大丈夫です」
その言葉が、後の「事件」の火種になるとは、この時まだ誰も気づいていなかった――。
第二章:履歴書という名の誠実さ
お見合い当日。
場所は落ち着いたカフェラウンジ。待ち合わせの5分前には到着し、背筋をピンと伸ばして座る慎一。彼の隣には、封筒が一つ。
10分後、女性が現れる。名前は石川美和(いしかわ・みわ)。32歳の事務職。プロフィールでは「落ち着いた雰囲気の方と出会いたい」と書かれていた。
彼女は第一印象から、慎一の真面目さを好意的に受け取っていた。だが――
慎一が「はじめまして」とお辞儀をすると同時に、封筒を差し出した。
「あの……こちら、私の履歴書と大学時代の成績証明書、それから健康診断書のコピーです」
美和、フリーズ。
「…え?」
「いえ、初対面で不安もあるかと思いまして。少しでも安心していただけたらと。職歴、収入、健康状態、すべて開示しております」
目の前の封筒には、なんと細かい自己紹介のレジュメまで入っていた。
表紙には「自己PR資料(全16ページ)」とある。手作り感満載のファイルには、勤務先の社屋写真、自宅の最寄り駅からのルート図、さらには老後資金計画のグラフまで……。
美和は思った。
(……ここは就職面接会場じゃないよね?)
第三章:誠実さは時に人を遠ざける
その後の会話も、慎一は終始「誠実さ重視」。
「結婚後は家事の分担表を作りましょう」「子育て資金はNISAとiDeCoで管理しておきます」「定年後の生活設計はもう立てています」など、完璧すぎる設計図を語り続けた。
一方で、美和が「休日は何をしてますか?」と聞くと、
「最近は老後資金の勉強と、Excelで人生設計表を……」
うん、真面目すぎる。
彼女はふと思った。
(もしこの人と結婚したら、私は「一人の女性」ではなく「人生計画の一部」にされるかもしれない……)
最後には、彼女は「本当に素敵な方だと思います。でもちょっと“安心”を通り越して、“計画”になりすぎている気がして……」と丁寧にお断りをした。
終章:アドバイザーの優しさと、彼の一歩
後日、田村アドバイザーは慎一に優しく語った。
「佐久間さんの誠実さは、まちがいなく強みです。でも、恋愛や結婚って、“合理的”よりも“共感”や“楽しさ”も大事なんです」
「履歴書よりも、あなた自身の“人となり”を、まずは会話で伝えていきましょうね」
慎一は深く反省し、少しずつ自分の表現を変えていった。
履歴書は封印され、代わりに最近は趣味だった読書や、週末に始めた料理の話を交えながら、自分の人間らしさを伝えるようになった。
そして――数ヶ月後。
ある女性と「料理好き」という共通点で意気投合し、仮交際に進んだ。
「最初はちょっと固い人かなって思ったけど、話してるうちに、すごく可愛いところがある人だなって思いました」
彼は照れ笑いを浮かべながら、その言葉を受け止めた。
エピローグ:履歴書より、笑顔を添えて。
婚活には、真面目も大事。だけど、人の心を動かすのは、数字や実績じゃない。
会話の中のちょっとした笑顔や、たどたどしいけど一生懸命な言葉。
それが、きっと一番の「信頼資料」なのかもしれません。
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