理想の条件
都内のしがない営業マン、田中翔太(35歳)。彼は恋愛経験ゼロではないが、彼女いない歴はかれこれ7年目に突入していた。
友人の結婚式に出席した帰り、酔った勢いでスマホをいじっていた翔太は、ふと目に入った広告に目を留める。
「結婚は情報戦!あなたにぴったりのお相手をご紹介します」
「ふん、どうせ美女は金持ちに行くんだろ?」
そう思いつつも、翌朝にはしっかり登録していた。人間、寂しさには勝てない。
初回カウンセリング
スーツ姿の翔太は、某大手結婚情報サービス会社のビルに向かった。担当カウンセラーは坂本さん(50代・ベテラン)。笑顔は素敵だが、目が笑っていないタイプだ。
坂本さんは早速、プロフィール用紙を渡してきた。
「では、理想の女性の条件をお書きください」
翔太は少し悩んでから記入を始めた。
年齢:25〜30歳
職業:できれば医療関係(白衣萌え)
身長:155cm以下(小柄好き)
趣味:料理、読書(家庭的で知的)
性格:優しくて、怒らない人(元カノが怖かったトラウマ)
そして一番最後に、「理想の休日の過ごし方」を聞かれた翔太は、ふと思い出したように書いた。
「一緒にYouTubeでカピバラ動画を見ながらゴロゴロしたい」
初回マッチング
後日、坂本さんが真顔で言った。
「田中さん、条件を詰め込みすぎです。これでは…“幻の生物”を探すようなものです」
翔太:「え、そんなに…?」
「ええ、特にこの“怒らない人”と“白衣萌え”が矛盾してます。医療関係の女性は忙しいですから、怒らないわけがないです」
妙に納得。
坂本さんは続けた。
「条件を緩めましょう。“白衣”を“白い服が似合う人”に、“怒らない人”を“怒っても3分以内に笑う人”に」
もはや禅問答である。
お見合い当日
ついにお見合いの日が来た。
紹介された女性の名前は井上恵(32歳)。年齢は希望より少し上だったが、プロフィールには「趣味:カピバラ動画鑑賞」と書いてある。
翔太はそれを見て興奮した。
「運命だッ…!」
当日、指定されたカフェに現れた女性は、小柄で、白のワンピースが似合うおっとりした雰囲気の人だった。
が、席について5分後。
「実は…私、カピバラが嫌いなんです…」
翔太:「えっ!!プロフィールには…」
「前の彼氏がカピバラ好きで、それに合わせてただけで…。でも正直、あのヌルッとした目が怖くて…」
翔太:「じゃあ、趣味:カピバラ動画鑑賞って…」
「ウソです」
プロフィール詐欺!!
奇跡の再会?
お見合いは当然不発に終わった。
だが、帰り際に翔太はカフェでぶつかった女性に謝りながら見上げると、彼女のスマホにはこう表示されていた。
「おすすめのカピバラ動画10選」
翔太:「それ…!」
女性:「あ、私カピバラ大好きなんです。毎晩癒されてて…」
翔太:「(今度こそ本物だ…!)」
エピローグ
後日、翔太はその女性と食事に行き、奇跡的に交際へと発展した。
現在は、一緒にカピバラ動画を見ながらゴロゴロする週末が定番。結婚情報サービスは無駄だったかと思いきや、実はそのカフェもサービスが提携していた会員限定ラウンジだったことが判明。
坂本さんに報告に行ったら、いつもの無表情で一言だけ。
「だから言ったでしょう、“カピバラ”は大事です」
翔太は思った。
(この人、実はカピバラなんじゃないか…?)
完
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